ニッセイ同和損害保険株式会社は、2003年10月より保険契約者向けインターネットサービス『ふれ愛ほっとネット』を開始した。開発にあたって、同社は当初、RDBMSをベースに設計を始めたが、データ項目がなかなか定まらないことから、急遽、XMLデータベース「NeoCore」に変更。XMLによる柔軟なデータ管理で運用コストの大幅な削減を実現した。
導入の経緯、今後の展開について、情報システム部 IT企画室の中島一郎氏、さらに開発に携わった日立システムアンドサービスのプロダクトソリューション事業部の笠松哲也氏にお話を伺った。
創立以来、“幸せへの挑戦”を企業理念に掲げるニッセイ同和損害保険は、顧客・株主・代理店・社員・社会・地球への貢献をめざし、現在、顧客第一(Customer First!)、共創(Collaboration)、チャレンジ精神(Challenge Spirits)の「C3」をスローガンに各種保険商品の販売事業を展開している。
同社は、顧客サービスの一環として、この度、保険契約者向けのインターネットサービス「ふれ愛ほっとネット」を開始した。当サイトでは、会員登録した保険契約者に対して、契約内容の照会や事故の解決状況の参照、自動車免許の更新時期の通知など、さまざまなサービスを提供する。また、会員向けのアンケートやキャンペーンなども随時、実施していく予定だ。これまで代理店向けのシステムに注力してきたが、同社にとって保険契約者向けに本格的なネットサービスを提供するのは初めての取り組みである。
開発にあたって、同社がまず考えたのは「いかに構築・運用コストを抑えられるか」ということだった。
「インターネット通販を販売の主力としないニッセイ同和では、今回のようなお客様向けのコミュニケーションサイトは、直接的な利益につながるものではありません。言ってしまえばコストセンターです。ならば、構築や保守にコストを掛けられない。いかにコストを掛けずにできるかが重要でした」
(ニッセイ同和損害保険 情報システム部 IT企画室 上席推進役 中島一郎氏)
開発を担当した日立システムアンドサービスは、この命題を受け、2002年12月からRDBMSをベースにプロジェクトを進めた。基幹の顧客情報システムとの連携や運用面の負担を考えれば、使い慣れたRDBMSは当然の選択だったといえる。また氏名や住所、家族構成といった顧客情報を管理するCRMシステムの場合、RDBMSを採用するのが一般的だ。今回のシステムも同様と考え、データ項目の抽出に取り掛かった。
RDBMSの場合、あらかじめ設計したデータしかデータベースに格納できない。従って、当面必要なデータ項目と将来必要になりそうな項目を抽出し、それらすべてのデータが格納できる領域を確保しておかなければならない。
しかし、2003年2月に要件定義を終え、基本設計の段階になってもデータ項目はなかなか決まらなかった。(1)アンケートやキャンペーンで集める項目はその都度決めていきたい、(2)これまで使い捨てだったアンケートデータを今後は蓄積しておきたい、(3)しかし抽出したデータはいつ使うかわからない、(4)時間が経てば不要になるかもしれない、等の要望を加味すると、データ項目を確定することが非常に困難だった。突き詰めていくと、「ふれ愛ほっとネット」がめざすシステムは、“必要な時に必要なデータを扱えるシステム”である。しかし、RDBMSベースで構築すると、メンテナンスの作業が多くなるのは必至だ。
RDBMSでは、データ項目を追加するためにスキーマを変更する作業が必要であり、これに伴って、データベース・アクセス・モジュールを見直さなければならない。さらにモジュール間で受け渡すデータ構造の変更も予想され、プログラムの変更など、データ項目を追加修正するたびにメンテナンスに多大な労力とコストを要する。
これらの課題を解決する策として、日立システムアンドサービスが出した結論が、XMLデータベース「NeoCore」によるシステム構築への変更だった。
「XMLデータベースならば、XML文書単位で独立して管理するため、XML文書の中のデータ項目を変更してもデータベースに与える影響は少なく、モジュール間の受け渡しもXML文書にすれば、修正が生じても既存のプログラムに与える影響は格段に抑えられます。当然、社内でも変更のリスクを協議しましたが、競合のネイティブXMLデータベースの中でも、優れた柔軟性とコストパフォーマンスを発揮するNeoCoreは、ニッセイ同和損害保険様の要求を満たすものと判断しました」
(日立システムアンドサービス プロダクトソリューション事業部 Webシステム開発部 部長 笠松哲也氏)
提案を受けたニッセイ同和損害保険の中島氏は、「フレキシブルなデータ項目の改廃ができることは非常に魅力的」と賛同。こうして2003年3月、NeoCoreによるXMLベースのシステム構築が決まった。
構築には、3回ほどプログラム変更を要したが、プロジェクト当初に設定した2003年秋のリリースを延ばす必要はなかった。 現在のシステム構成は、DBサーバにNeoCoreを据え、ESB(Enterprise Service Bus)に対応したPolarLakeを介して、Web/APサーバへとつながっている。各モジュール間はXML文書で受け渡しが行われる仕組みだ。
これにより、アンケートなどを新たに実施する場合、必要となる作業は入力画面の作成と参照/分析画面の変更のみとなる。しかも参照/分析画面の作り方を工夫すれば、プログラム修正せずに、設定ファイルの修正だけで済ますことが可能だ。
「RDBMSの場合、新しく項目を追加する場合、既存のデータに対しても項目が追加されますが、NeoCoreでは、スキーマ変更の必要がなく、過去のデータを触わる必要がありません。新規のデータにだけ項目が追加されるので、まるでカード型データベースのような感覚で非常にわかりやすく容易に手を加えることができます」
(ニッセイ同和損害保険 中島氏)
また、既存データに項目を追加する場合は、データベースにある旧XML文書は削除され、新しいXML文書が追加される。この時、RDBMSで相当するインデックスは作成されず、NeoCoreがもつ「フルオートインデックス機能」により、独自形式のインデックスがすべてのデータに対して自動的に作成される。これにより、データの参照は全件検索ではなく、インデックス検索になるため、他社にない超高速な検索性能が発揮できる。
まさに同社の要求を満たすシステムであり、当初計画したRDBMSベースの運用に比べて、メンテナンスコストは30~50%削減することが可能となった。
現在、「ふれ愛ほっとネット」の登録者数は約1千人。今後はアンケートやキャンペーンを本格的に実施し、会員との双方向のコミュニケーションを充実化を図る。
「データ項目を自由に改廃できるので、アンケートやキャンペーンに関して、トライ&エラーを繰り返すことができます。これは非常に意義のあることで、どのような情報を会員が望んでいるかを実際に運用しながら把握することができます。今後はその結果を踏まえながら、いかに有益な情報を発信していけるかが課題となりますね」
(ニッセイ同和損害保険 中島氏)
さらに「ふれ愛ほっとネット」を通じて得た情報を抽出して、今後の商品企画にも役立てていく予定だ。こうした条件抽出もNeoCoreならば、簡単に設定でき、しかも高速に検索することができる。他のシステムとの連携も視野に入れており、NeoCoreを核とした本格的なCRMシステムへの拡張も将来的には検討している。ニッセイ同和損害保険にとって、今後もNeoCoreは、重要な役割を担うに違いない。
〒162-8001
大阪府大阪市北区西天満4-15-10
創 業 | : | 1944年3月 |
---|---|---|
社 員 数 | : | 4,400人(2004年3月31日現在) |
資 本 金 | : | 473億円(2004年3月31日現在) |
事業内容 | : | 損害保険業 |
パートナー企業: